最近、ミステリー小説を読んで、当たり外れをかなり感じている。ミステリーの仕組みが論理的ですっと頭に入ってくる場合はストレスがないが、いまいち理解しにくいトリックであったり、難解すぎる場合だと、腑に落ちずに、読後に嫌な気持ちになってしまうこともある。特に犯罪ものだったりすると、なぜ犯罪者がその犯罪を犯したかという動機に、納得がいかないものがあると、いまいちスッキリしない。
今回、呼んだのは「六人の嘘つきな大学生」。就職活動の最終面接でおこなわれたことをきっかけに嘘つき(犯罪者)を探していくというストーリーだ。自分は「12人の怒れる男」の映画が大好きなのだが、最初はそのような感じで陪審員のように、就活生がお互いのこと探り合い、最終的に犯人を捜していく。
当初はその犯人を見つける過程で終わるのかと思ったが、それ以降、実際に就活が終わってからのストーリーのほうがとても面白く楽しめた。
自分も新人の教育を担当していて、よく思ったのだが、「なんでこんな新人を採用したのか?」という疑問だ。しかし、採用側としても人を見分けるのは本当に難しいことがある。たかが、ちょっとした面接と試験と書類審査でその人の人間性が分かるわけもない。
人のことは完全に分かるわけはないのだけれども、就活を通じて、その人のことを分かろう、理解しようとする人たちがいる。そして、登場人物たちは全て、決して完全な悪人ではないし、完全な善人でもない。
前半はその人の悪事、悪の面についてふれていることが多いが、後半に連れて、やはり人には良い面があり、それを信じることにシフトしていく。人の心の悪い面ではなく、良い面にフォーカスして話が終わることで、自分の気持ちもすっきり、晴れやかな、気持ちのいい読後感を与えてくれる。
とても論理的、緻密に構成された小説で、作者の手のひらでうまく転がされた感はあるが、それがとても心地よく、最後まで楽しく読めた傑作でした。