読書感想文

「人類と気候の10万年史」「時を刻む湖」(中川毅)を読んで

 

ここ十数年、温室効果ガスによる、地球温暖化が問題となっています。

自分は以前、その論を素直に信じていなかったのですが、色んなデータが出ることによって、本当にこれから人類が直面する大規模な問題だということが、理解できるようになりました。

その論に反対する人から、よく引き合いに出されるのが、これから地球は氷期に入ろうとしているということを聞いたことがあります。

「氷期?」恐竜が氷河期で絶滅したのは知識としてあります。けれど、それは隕石の衝突によるものだと思っていました。氷河期と氷期って何が違うのでしょうか?地球上の過去の気候変動は、今までどのようなものだったのでしょうか?そのことを本書はとても興味深く教えてくれます。

 

昔の気候を調べる学問を「古気候学」というらしいです。

では、どうやって、過去の地球の気候や温度変化を調べられるのでしょうか?

簡単に思いつきそうなのは、化石や地層の構成物から科学的に調べられそうな気がします。

実際に炭素年代測定法という炭素14(14C)の量で測定する方法があるそうです。

しかし、その測定方法があってるかどうかの基準、どれくらい誤差があるかというのが問題になってきます。もし、測定の誤差が100年もあるようであれば、それは歴史の教科書が全然変わってくるお話です。

 

今回読んだ、この2冊の本は、その過去を測る基準をつくる「ものさし」の研究をしたお話になります。

例えば、木の年輪だと正確に年代が測定できるようなのですが、さすがに、数万年も生きている樹木はありません。

では、どうやって古い時代を調べるのかというと、湖の底に堆積している堆積物を調査して過去の年代の状況を調べるということらしいです。

しかし、どの湖でもよいわけではなく、湖の底を生物が荒らさずにきれいに残っている必要があります。そんな湖が奇跡的に日本にあって、作者の中川さんはその研究に第一線で関わった研究者になります。

 

第一線の研究者が書いた本ですが、そこまで小難しい話はなく、今までの地球の気候の変遷や、どのように年代を測定できるようになったかが、時には情熱的に、時にはドラマチックに描かれています。

・今まで地球は氷期と間氷期の繰り返しで、平均数度に渡る温度変化を繰り返したこと。それにともない、氷河も溶けたり、凍ったりを繰り返していた。

・湖底の堆積物に含まれる、花粉の量を分析することで、その時の日本に何の樹木が生えていたか、どれくらいの温度だったか推定できること。

上記のような面白い話がぞくぞくと出てきます。

 

ただ、読んでいて、それ以上に面白かったのは、科学者の探究心です。

海外の専門の研究者が、遠路はるばる日本に来て長い年月かけて、何メートルもある堆積物を時間をかけて数えていく。すごく地道な努力です。

何々を発見した!という目に見える成果があるわけではなく、あくまで、表舞台の研究に必要なための基準、ものさしを作るという裏方の仕事です。

彼らのその地道な研究の元に、色々な分析結果が生まれています。

自分たちの知る世の中の歴史が、こういった地道な科学者のたゆまない努力のもとで、分かっているのだなということを、とても感慨深く思いました。

そして、そういった地道な研究を続けている方々に非常に敬意をいだきました。

科学って面白いな、そう本当に思わせてくれた、素晴らしい良書2冊でした。

 

人類と気候の10万年史 

過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

時を刻む湖

-7万枚の地層に挑んだ科学者たち (岩波科学ライブラリー)