次男が小さい頃、休みの度に、どんなに暑くても、虫取りに行こうと言われ、つきあわされました。
近所の野原に虫かごと網をもって、いざ出陣。
男の子はやはり、虫が大好き。
ただ炎天下の中の虫取りは、中年過ぎのおじさんにはきつかった。
バッタにトンボ、キリギリスにコオロギ、イナゴにショウリョウバッタ、本当に色んな虫を捕まえました。
その中でもカマキリの攻撃性の強さ、コオロギの何でも食べる強欲なとこなど、大人ながらに虫に関して、意外な驚きがたくさんありました。
小さな息子は当時、虫博士になりたいと、常々言っていたものです。
この「バッタを倒しにアフリカへ」は、かつてファーブル昆虫記を読んで、昆虫学者を目指した作者が、大学でサバクトビバッタの研究をし、実際のフィールドワークをするためにアフリカまで赴いたお話を中心に書かれています。
実際にアフリカのモーリタニアのバッタ研究所に行ったものの、干ばつでバッタがなかなか出現しないという緊急事態におちいったり、収入がなくなりそうになって、研究ができなくなりそうになったりと、現地で色々な困難が待ち受けます。
また、もう1冊の「孤独なバッタが群れるとき」は「エピソード1」と書かれてるとおり、そのモーリタニアに行く前の、大学でのバッタ研究の詳しい様子が書かれてます。
こちらは、実際の実験結果等も多く書かれてるので、難しい点はさらりと読み飛ばしても大丈夫です。
作者が研究しているサバクトビバッタ。
アフリカ地方では大発生して、農作物に多大な被害をもたらしているようです。
しかし、ヨーロッパや白人の研究者はアフリカでは強盗等の被害に合うことが多く、アフリカまでフィールドワークに来ることはほとんどないそうです。
また、現地の研究者はえらくなると、事務や管理などの仕事につくことが多く、実際の現地でのバッタ研究が進んでないのも事実だそうです。
そんな中、日本から、実験室ではなく実際のバッタの様子がわからなくては、意味がないと、単身アフリカに乗り込む作者。ぼったくられたり、サソリにかまれたり、色々なアクシデントにみまわれますが、研究をしたいという熱意が彼を動かします。
そして、モーリタニアのバッタ研究所のババ所長は、その彼の心意気に感動し、彼に「ウルド」の称号を与え、彼をいつも叱咤激励してくれます。
昆虫学者になりたいという熱意。
バッタに対するあふれんばかりの愛情。
研究にたいしての行動力。
そして、ユーモアあふれる文章。
研究者はいかに生きてるか、そしてこういった研究のひとつひとつが、世界を救う一助になっているのを、ひしひしと感じることができました。
子どもの頃に憧れた昆虫学者への夢。
それを諦めずに、一心不乱に追い求めた男の姿がそこにありました。
それぞれのエピソード自体は面白いのですが、根底にある、あきらめずに夢を追い求める作者の力に感動させられます。
バッタに一ミリも興味が無い人でも、読んでほしい名作です。