日本人なら必ず読むべき作品です。
今、平和に生きているこの世の中を作るために、先人がどのような不当な目にあって、苦しんできたのかが詳細にわかります。
日本人であるなら、死ぬまでには、必ず一読してほしい本です。
戦中戦後、シベリア捕虜収容所に収容された捕虜の人たちの様子を丹念な取材をもとに、非常にリアルに描かれています。
「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」を原作に映画化され、それをノベライズしたものが、「ラーゲリより愛を込めて」になります。
ノベライズの物より、原作のほうが細かく書いてあるのでそちらを読んでほしいのですが、ノベライズ版でも大丈夫です。
話はシベリア捕虜収容所に抑留された、山本幡男一等兵を中心に話が進みます。まともな食事もとれない、極寒のシベリアで、過酷な労働を捕虜たちは強いられます。
勝手に政治犯として刑を宣告され、帰れる見込みもないなか、あるものは自殺し、あるものは病気や栄養失調で死んでいく、過酷な捕虜収容所。戦争が終わった後も、ロシアは不当に、安価な労働者として、捕虜をこきつかっていました。
その過酷な収容所の中で、山本幡男だけは違いました。
いくら辛くても希望を失わない。
みんながあきらめても、山本だけはあきらめない。
いつか必ず帰国(ダモイ)できると信じている。
そして、山本のすごかったところは、「楽しみ」を忘れなかったことです。日々生きることに精一杯の制約ばかりの生活の中で、歌を唄い、俳句を作り、言葉を教え、野球をやり、句会を開催する。
山本は、こっそりと仲間を集めて、監視員に見つからないように、句会を始めます。悲しく辛い境遇の中でも、その気持、情景を俳句で仲間たちとともに表現し、また仲間も徐々に俳句を覚え、日々の生活の潤いを増やしていきます。
どんなに辛い状況の中にあっても、生きていくことの楽しみ、日本人としての文化を忘れない。監視員に見つかって、殴られようとも、過酷な独房に入れられようとも、自分の信念を曲げずに、山本はやり続けます。
そして、それが、周りの捕虜たちの心を徐々に動かしていきます。
生きていく意味を無くした男が、希望を持ちます。
母と妻を亡くした男が、希望を回復していきます。
希望を持つことの大切さ、そして楽しみを持つことの大切さ、これ以上ないひどい環境の中でも、山本はそれを実践し、人々に伝えていきます。
こういった先人たちのおかげで、われわれの平和な日本があること。
そして、辛い状況下にあっても、希望と楽しみを忘れなかった山本の生き方を、心の奥底にひめながら、生きていきたいと思いました。