読書感想文

『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』(マシュー・サイド)を読んで

 以前、中田敦彦のYouTube大学で、移民が多い国のほうが成長する、という話を聞いたことがあります。自分としては、その話があまり納得がいきませんでした。

 日本はもともと移民に対しては厳しい国です。その分、治安が保たれ、日本人にとっては住みやすい国になっています。しかし、近年、日本が他国より成長が鈍化しているのは、明らかです。なぜ、移民が多い国のほうが成長するのか、不思議でした。

 今回、読んだ本は「多様性の科学」という多様性があるほうが、科学的にどういう効果をもたらすかを、様々な実例を元に解説した本です。

 例えば、9.11のアルカイダのテロ攻撃に対して、CIAが何故防げなかったか?それは、CIAという組織が優秀ではあるが、多様性に欠けていたため、イスラムの過激派組織を見抜く視点を見落としてしまったということです。ほとんとが白人のプロテスタントであったため、アルカイダの組織の危険性に気づくのに、時間がかかってしまったことが、実際あったようなのです。

 また、多様性があったからといっても、組織が支配的であると、その多様性が生かされない、といったことも書かれてありました。エベレストに登山したグループで、意見をするのが許されないリーダーに支配されたグループは、たとえ多様性があったとしても、死亡者が多く、成功する確率は低いようです。

 優秀な人を選んでいれば、優秀な組織ができる。わざわざ、人種や性別に考慮して人選をするのは、正直、自分としてはよくないことだと思っていました。しかし、この本を読んで、組織は自分と似た人間を集めがちになってしまうこと、そして多様性のあるチームのほうが、軋轢は増えるが、組織としては優秀だということを理解できました。

 それとともに、自分の中の多様性を育むことの大切さに気付かされました。色んな人と知識と情報を共有すること、自分の凝り固まった考え方に縛られないこと、つい、自分に都合のいい情報だけを知りたがってしまう世の中で、多様性の重要さに気付かされた良書でした。