コーポレートガバナンスという言葉があります。
どういう意味かというと、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会などの立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」のことです。
日本ではいわゆる、会社内での決め事が、誰かひとりの意思で決まってしまうことが多々あります。一族経営だと、親が子供に社長をゆずったり、派閥のある会社だと、大きな派閥に属しているほうが優遇されやすい傾向があります。それが、とかく透明性をかき、株式会社として株主からすると非常に疑問が残ってしまいます。
また、昨今、物言う海外の株主が増えたことで、オープンな公明性のある会社組織が、世界的に求められている実態があります。
本書はLIXILという住宅建材メーカーの社長の突然の辞任劇を通じて、日本の会社のコーポレートガバナンスの無さと、それを取り戻すまでの闘いを、つぶさに取材して、臨場感あふれる物語として描いています。
ことの発端は、プロ社長として雇われたCEOの瀬戸が一族の潮田と意見が合わず、取締役会で解任されることに始まります。創業一族出身の潮田が瀬戸を気に入らず、自分と方針が合わないというだけで、嘘の説明を締役会にし、瀬戸を辞任に追い込みました。
それを瀬戸は不服と思い、仲間たちと協力しながら、株主総会で自分たちが公正に決めた、取締役選出の議決を求めて、闘うまでを追ったドキュメントが本書になります。
そして、無事瀬戸が社長に戻れたあかつきには、LIXILはコーポレートガバナンスを確立し、誰かの一存で不正に物事が決まることのないような会社組織に変更していきました。
正直、こういった会社内の動きというものが、閉鎖的な密室の中で決まってしまい、外に漏れ伝わることが少ないのですが、作者が複数の方に丁寧にインタビューを重ねていき、さもその会議にいたかのような臨場感あふれる物語になっていることに感動です。
潮田にいいようにやられる瀬戸。ついてきてくれる仲間。相手からの反撃。最後の逆転劇。まるでフィクションの小説を読んでいるかのような展開や、ストーリーの面白さを存分に感じさせてくれます。
また、それと同時に、日本の会社がLIXILがしたような、健全化したコーポレートガバナンスがどれだけあるだろうか?と考えた時に、まだまだ厳しい現状だということは、考えさせられます。
会社系ドキュメント、なかなかはまりそうです。