過去、多分、20年ぐらい前、インターネットを使って、お互いのファイルをやり取りする、ファイル共有ソフトが流行った時期がありました。その当時、自分はWinMXを使用していました。そのソフトの特徴は、お互いのファイルを見せ合って、いいのがあったら、交換しあおうみたいなスタンスでした。なので、一方的にダウンロードだけしてて、提供するファイルがない場合は、回線が切られるということが多々ありました。
その当時、日本で2ちゃんねるを中心にだと思いますが、Winnyが使われることが多くなってきました。自分はWinMX派だったので、あまり詳しくは分かりませんが、お互いに交換というより、色んな人から分散して、ファイルを集めてくるイメージだったと記憶してます。
今回読んだ本は、そのWinnyを開発したプログラマーが逮捕され、その裁判で無罪を勝ち取るまでの過程を、実際に弁護にあたった弁護士さんが書いたものです。最近、YouTubeで取り上げられる回数が増えたので、なぜかと思ったんですが、映画化された影響みたいでした。
リアルな裁判の過程や、刑事裁判を立件するため、いかに刑事さんが強引な手法をしてくるか、NHKやマスコミの取材がどれほど無責任で身勝手か、そういった実際の報道だけでは見えてこないところが、本書を読むと、よく分かります。
よくIT犯罪の捜査で話題にあがる、京都府警のサイバー犯罪対策課がいかに無知で、自分たちの都合で動いているか、若干腹立たしいものがありました。Winnyはあくまでプログラムであって、そのものが犯罪性があるわけではありません。例えば、包丁を作った人が「殺人ほう助罪」でつかまるようなものです。プログラム自身やそれを作った人に罪はありません。
Winnyを作った金子勇という方は天才プログラマーでした。ただ、その作ったプログラムを悪用する人がいたせいで、警察のやり玉にあげられて、逮捕され、人生の貴重な時間を裁判でつぶされてしまいました。警察によって、一人の天才の人生が奪われてしまいました。まだ、現在まで一切、警察や検察からの謝罪はありません。
その金子さんが亡くなったのをこの本を読んで知りました。彼が裁判が終わり、研究者として過ごすことができたのは、たったの半年だけだったそうです。彼の人生を考えると、可哀そうでありません。彼の純粋さを生かすことのできなかった、日本という国の責任だと思います。
この日本の検察、刑事裁判、弁護士、マスコミ、それぞれの異常性が垣間見えて、恐ろしさを感じたと同時に、金子氏の純粋さや筆者の弁護士としての信念とその奮闘ぶりに、本当に感動しました。色んな方に読んでほしい、素晴らしいノンフィクション小説でした。