読書感想文

「世界史を大きく動かした植物」(稲垣 栄洋)を読んで

 

 高校の時に世界史を選択していましたが、先生が厳しくなかったもので、世界史の時間はお昼寝の時間となっていました。しかし、大人になって、色んな世界情勢を見るにつけて、何故?今こうなっているのか?何故中東はいつまでももめているのか、何故ウクライナは戦争をしているのか?今までの歴史の流れを知らなければ、理解できないことが増えてきました。

 けれど、今から世界史を体系的に学び直すのも、めんどうくさい。そんな時に、色んな側面から、わかりやすく世界史を見直す本が、最近は様々出ています。読んでみると、細かい歴史は知らずとも、ある側面から見た世界の歴史というものが、徐々に紐解かれていきます。読むと、世界史が分かったような感じに、なってきます。

 試しに、以前、経済学からみた世界史というのを読んでみて、面白かったので、今回は植物学から見た世界の歴史の本を読んでみました。

 植物と世界史、あまり関係なさそうですが、読んでみると、非常に密接に関わりあってることが分かりました。人間が生きるためには、必ず食べ物が必要で、植物の歴史はすなわち、人類がどうやって食べて生活していったかの、歴史でもあります。

 特にイネの発展については興味深かったです。単子葉植物であるイネは、繊維質が多く、動物に食べられないように進化してきました。しかし、牛はその消化しにくい植物を食べられるように、胃を何個も増やして、さらに進化をしてきました。また、人間はそのイネを自ら育て、牛や豚の餌にしたり、自らも食べそして貯蔵してきました。小麦やコメは長期保管ができたため、そこで、初めて人間に、貧富の差が出てきたというのも面白いものです。

 また、トウモロコシが宇宙からやってきた植物ではないか?という説があるのも興味深いです。種が皮でおおわれているため、人間が媒介しないと増やすことができない、トウモロコシ。今では人間の食用だけでなく、家畜の餌や、オイルの精製など様々な用途で使われていて、世界で最も生産量の多い穀物となっています。しかし、どのような進化の過程を経て、トウモロコシができたのかは、いまだに分かっていません。

 人は食べなければ生きていけない。植物も動物に食べられまいと、工夫し進化をしてきました。しかし、人間の知恵がまさって、植物を利用し、人間は今まで生きてこれました。人間が生きてこれたのは植物のおかげです。人類と密接に関わってきた植物の歴史を紐解くことによって、そもそもの人類の歴史が学び直せる、非常にためになる本でした。ぜひ、一読をおすすめします